大会長挨拶

第43回日本小児遺伝学会学術集会開催にあたり

第43回日本小児遺伝学会学術集会 大会長

古庄 知己

信州大学医学部遺伝医学教室・教授
信州大学医学部附属病院遺伝子医療研究センター・センター長


 信州大学医学部遺伝医学教室・同附属病院遺伝子医療研究センター 古庄知己(こしょう ともき)と申します。新型コロナウイルス感染症が経済、医療、教育など社会のあらゆる場面に大きな影響を与え、日本小児遺伝学会会員の先生方をはじめ、小児遺伝に関わる全ての方々におかれましては、例年とは大きく異なる活動を余儀なくされていることとお察しします。また、新型コロナウイルス感染症患者様の診療の最前線に立っている方、身近に入院加療を受けられた患者様がいる方もおられることと存じます。心よりお見舞い申し上げます。

 さて今回、第43回日本小児遺伝学会学術集会を担当させていただくこととなりました。伝統ある日本小児遺伝学会の歴史の一部を担えることは大変光栄なことであり、また身の引き締まる思いでもあります。参加してよかったと感じていただけるよう、学び、出会い、そしてあたたかみのある学術集会を作っていければと思います。

 テクノロジーが進化しても変わることのない小児遺伝学の「軸」は、遺伝性・先天性疾患を持つ子どもたちやご家族の側に立ち、こころに寄り添い、あらゆる(医療・療育・心理・社会的)支援を提供すること、そして、疾患や障がいを持っていても、生き生きと生活できる社会作りに貢献することであると信じております。そこで本学術集会のテーマを「Management of Genetic Syndromes : 遺伝性・先天性疾患を持つ子どもたちが生き生きと暮らせる社会を目指して!」といたしました。

 特別講演として、John C. Carey先生のご講演があります。Carey先生は、ユタ大学小児科教授として、またAmerican Journal of Medical Genetics誌の編集長として、長く先天異常症候群の診療、研究、教育を牽引されてきました。特に、米国における13トリソミー、18トリソミーの会(SOFT:Support Organization for Trisomy 18, 13, and Related Disorders)を長年支えてこられ、同症候群の診療、研究における世界的リーダーです。私が18トリソミー児への診療のあり方に関する研究に取り組み始めてから15年近くにわたり、支え励ましていただきました恩人の先生です。今回、同症候群を中心に遺伝性・先天性疾患を持つ子もたちへのマネジメントのあり方についてお話しいただく予定です。

 シンポジウム1では、「小児遺伝と“こころ”」と題して、異なる分野で比類のない活躍されている3人の先生(余谷暢之先生、山崎浩司先生、渡辺久子先生)に小児遺伝関係者に必要な「新たな視座」をお示しいただきます。余谷先生は、「アドバンス・ケア・プランニング」について、山崎先生には「死生学」について、渡辺先生には「心のケア」について豊富なご経験に基づくお話をいただきます。

 シンポジウム2では、「小児遺伝cutting-edge」と題して、最先端の遺伝学研究を推進する2人の先生(三宅紀子先生、要匡先生)のご講演を伺います。三宅先生には「稀少疾患の遺伝子同定と発症メカニズムの解明」について、要先生には「小児遺伝分野におけるゲノム医療の最前線」についてお話しいただきます。要先生は、新型コロナウイルス感染のために開催できなかった第42回本学術集会の大会長でいらっしゃいます。ご講演の中で、第42回学術集会に込められたメッセージもうかがえるものと期待しております。

 シンポジウム3では、「Management of Genetic Syndromes」と題して、遺伝性・先天性疾患を持つ子どもたちと家族を様々な角度から長年にわたり支えてきた4人の先生(大橋博文先生、荒川経子先生、山本良彦先生、根本慎太郎先生)にその広く深いご経験をご紹介いただきます。大橋先生には「ダウン症児の包括的マネジメント」について、荒川先生には「小児病院における認定遺伝カウンセラー®️の役割」について、山本先生には「ダウン症児への理学療法」について、根本先生には「13トリソミー、18トリソミー児への心臓手術」についてお話いただきます。

 一般演題には、遺伝性・先天性疾患を持つ1 人1 人の子どもたちの医療や療育的ケアの実際、子どもたちやご家族への心理社会的支援や遺伝カウンセリングといった日常の小児遺伝臨床に根差す研究、新規症候群の発見や原因遺伝子単離、治療法の開発といった最先端研究、また社会政策に関わる研究など、あらゆる分野の演題を歓迎いたします。奮ってご参加のほどお願いいたします。

 冬の松本は、きりりとした寒さの中に、美しい北アルプスの山々を仰げる素晴らしい季節です。長野県立こども病院のある安曇野もすぐ近くです。たくさん学んだ後、温泉、お酒、お蕎麦、お城・街並み・安曇野観光、またウィンタースポーツなど、存分に楽しんでいただきたかったのですが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、WEBオンライン開催にすることを決定いたしました。ご参加の皆様の安全と、確実な開催のためこのような判断をさせていただきました。現在、WEBオンラインの中でも、少しでもinteractiveで温かみのある学術集会にできるよう、鋭意準備を進めております。日本小児遺伝学会会員の皆様初め、小児遺伝学・医療に興味・関心を持っておられる全ての方々に、演題登録を含め、奮ってご参加いただければ幸いです。ご理解のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。

 末筆になりますが、今回の学術集会の開催にあたり、多くの方々のあたたかいご支援、ご協力をいただきましたこと、心より感謝申し上げます。また、小児遺伝に関わる全ての方々とご家族の健康をお祈りいたします。

2020年8月吉日